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南界堂通信〈夏号|第35号〉

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同性婚訴訟、初の判決 札幌地裁、憲法違反を認める!

同性婚訴訟、初の判決
札幌地裁、憲法違反を認める!

前号でも紹介しました「結婚の自由をすべての人に」裁判の札幌地裁判決、3月17日に出されました。メディアでも大きく取り上げられたその内容は、異性のみ婚姻できるという現行の民法の規定が憲法14条(平等原則)に違反するというものです。いくつかポイントを見てみたいと思います(※)。

判決は、まず婚姻とは、「身分関係と結び付いた複合的な法的効果を生じさせる法律行為」で、「婚姻することにより、婚姻によって生じる法的効果を享受することは、法的利益であると解するのが相当である」とした上で、「異性愛者と同性愛者との間で、婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の価値に差異があるとする理由はなく、そのような法的利益は、同性愛者であっても、異性愛者であっても、等しく共有し得るものと解するのが相当である。」と判断しました。

大事な所は、「同性愛はいかなる意味でも精神疾患ではなく、自らの意思に基づいて選択・変更できるものでもないことは、現在において確立した知見になっている。同性愛者は、我が国においてはごく少数であり、異性愛者が人口の9割以上を占めると推察されることも考慮すると、圧倒的多数派である異性愛者の理解又は許容がなければ、同性愛者のカップルは、重要な法的利益である婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の一部であってもこれを受け得ないとするのは、同性愛者のカップルを保護することによって我が国の伝統的な家族観に多少なりとも変容をもたらすであろうことを考慮しても…同性愛者の保護にあまりに欠けるといわざるを得ない」として、少数派である同性愛者の保護の視点を打ち出している点です。

なお、憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」と規定している訳ですが、判決は「同条は、同性愛者が異性愛者と同様に婚姻の本質を伴った共同生活を営んでいる場合に、これに対する一切の法的保護を否定する趣旨まで有するものとは解されない」と明言しています。

初の判決は社会にインパクトを与えるとともに、励まされた当事者も多かったのではないでしょうか。同種の訴訟は、東京、名古屋、大阪、福岡の四地裁でも続いています(大阪地裁での次回の裁判は、6月25日に予定)。初の違憲判断となったこの流れが、今後どうなるのか、注目されます。

(※判決全文はCALL4のサイトで読めます。)

感染症法改正 
入院拒否や疫学調査拒否に過料が!

新型コロナ禍が続く中、今年2月、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)が改正されました。

当初の改正案は、入院や保健所の調査を拒否した人への罰則を新設するものでした。
①入院を拒否したり、入院先から逃げ出したりした人には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」とし、
②保健所の積極的疫学調査に対して答弁拒否や虚偽の答弁をした場合も「50万円以下の罰金」というものです。

いずれも前科がつく刑事罰で、各方面から批判が相次いだ結果(※)、国会での与野党の修正協議によって、
①は、懲役刑を削除するとともに罰金を「50万円以下の過料」に改め、
②も「30万円以下の過料」に改まりました。

しかしながら、過料(行政罰)に改まったと言っても、改正法にはなお問題が残ります。

ある行政法学者は、感染症法が強制的な手段は必要最小限とするアプローチを取っているとして、「その背景には、感染症法の基本理念、罰則を伴う強制の仕組みが国民に、当該疾病又は患者らに対する恐怖や不安・差別を惹起してしまった苦い経験がある。令和3年改正で入院措置を拒否した場合に罰則が科されるようになってしまっては、患者の自律性の尊重、相互の理解と信頼を基礎としていた勧告の性格が、かつての隔離の時代に先祖返りしかねない。これは、刑事罰をとりやめ過料にとどめたとしても残りうる根本的な問題であって、法の理念との整合性が問われているのである。」と述べています。

(磯部哲・慶應義塾大学教授「『自粛』や『要請』の意味」『法学教室』2021年5月号)
(※日本エイズ学会も改正法を深く憂慮する声明を出しています。)

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