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南界堂通信〈夏号|第35号〉

海外男街通信

リマ市内にある聖母清心教会
リマ市内にある聖母清心教会
ローマ教皇を歓迎する旗が掲げられている
リマの街中で見かけたアルパカ
リマの街中で見かけたアルパカ
リマのラッシュアワー
リマのラッシュアワー。
ホームにたどり着けない…泣(2017)
靴磨き。階層化社会を象徴する風景
靴磨きは山間部出身の先住民の人が多い。階層化社会を象徴する風景

Perú-Lima

ペルー/リマ

みなさまこんにちは、えんりけと申します。沖縄で生まれ育ち、大阪に出てきて多言語を学んできました。いま働きながら大学院生をやっています。ことばと社会について、差別の歴史を踏まえて今後何ができるのか考えています。

今日は私のルーツの一つであるペルーの話をします。ペルー共和国は南米大陸の太平洋側に位置し、面積は日本の約3.4倍、人口は3,200万人。国土は大きく三つに分けられます。コスタ(沿岸部)、シエラ(山間部)とセルバ(アマゾン地域)があります。首都のリマは沿岸部、インカ帝国の首都だったクスコや空中都市マチュピチュは山間部にあります。僕はこれまで、母の生まれ故郷であるペルーを三回訪れていますが、最初の二回は子どもの頃だったので断片的にしか覚えていません(笑)。そこで、三回目となる2017年頃にリマで働いていた時に感じたアレコレについてお話します。

リマ市内にある聖母清心教会
リマ市内にある聖母清心教会
ローマ教皇を歓迎する旗が掲げられている
リマの街中で見かけたアルパカ
リマの街中で見かけたアルパカ

まず、同性愛に対する国民の態度は保守的な印象でした。同性愛の行為自体は1920年代に脱犯罪化されましたし、2017年には性的少数者への差別を違法とする反差別法も成立しましたが、パートナーシップや同性婚は認められていません。2010年頃から他のラテンアメリカ諸国で同性パートナーシップや同性婚が法的に認められるようになりましたが、ペルーはこの点では後れをとっています。若い世代で「別にええんちゃう?」という感覚の人も増えつつある一方で、テレビでは今でもオカマ・ゲイ「いじり」をしている様子が見られます。

LGBTQの人々がよく利用する商業施設としてはディスコテカ(クラブ)がたくさんあり、なかにはかなり大規模なものもあります。特にミラフローレス地区とバランコ地区というスペイン風のお洒落な街に集中しています。逆に日本のゲイタウンにある小さなバーらしきものは見当たりません。

ペルー社会は人種によって社会階層が決まる側面がありますが、ゲイコミュニティも同じで、上から白人・白人と先住民の混血・アジア系・先住民・黒人の順に階層化されている印象でした。実際、私の滞在中に国勢調査があり、黒人系ペルー人の社会的地位向上のためのキャンペーンも小規模ながら行われていました。

ハッテン場は数か所あります。そのいくつかに行ってみましたが、コンドーム使用への意識付けは十分になされているようでした。国連合同計画が2019年に発表した報告によれば、ペルーのHIV陽性者の数は推定87,000人で、そのうち8割近くが治療をうけている、MSM(ゲイ・バイ男性)のHIV陽性率は10%、梅毒・B型肝炎の陽性率はその半分、トランスジェンダーのHIV陽性率は30%(!)、というものでした。この数字からうかがえるようにトランスジェンダーの人たちの状況は非常に厳しく、メディアに登場することも多くありません。

リマのラッシュアワー
リマのラッシュアワー。
ホームにたどり着けない…泣(2017)
靴磨き。階層化社会を象徴する風景
靴磨きは山間部出身の先住民の人が多い。
階層化社会を象徴する風景

そんな中、反差別法の制定や同性婚の法制化に向けて闘っているLGBTQの団体があります。MHOL(リマ同性愛運動)といって、ラテンアメリカで最古のLGBTQ団体です。今彼らが注目しているのはトランスジェンダーの人たちの性自認を法的に認めるか否か、つまり性別の変更を法制化するか否かという議論です。MHOLはゲイ・バイ男性の性的健康の向上にも注力していて、ハッテン場でのコンドーム使用意識が高いことからも、彼らの活動が浸透していることがうかがえます。

今後私がペルーという国とどうかかわっていくのかわかりませんが、クスコでLGBTQの観光客向けの温泉宿泊施設を起業したいと夢見たりしています。

……最後にひとつだけ。コロナが明けてみなさまがペルーを訪れる機会があったら、リマのペルー料理レストラン〈セニョール・リモン〉をオススメします。今世界的にペルー料理が注目されていますが、ここのセビチェ(白身魚マリネサラダ)は最高です。お試しあれ♪

また、ちょくちょくdistaにも関わらせてもらう予定なので、ぜひ遊びにいらしてください。南米や沖縄、ことばや文化など色々な話をしましょう ^^

えんりけ

差別と人権にまつわる問題について主にことばと社会の側面から考えています。最近は仕事でこどもとの関わりあいが増えたことにより、小中学生向けに何かを伝えることの難しさを痛感しています。そのため、相手によってどう翻訳するか・ことばを尽くすか試行錯誤中です。これまでdistaの中国語講座にときどき参加していましたが、これからはスタッフとして関わらせて頂くはこびとなりました。見かけた際にはお声がけください~^^
写真は2011年、肌のことで悩んでおり「僕のことを好きになってくれる人なんていないんじゃないか」と思っていた時期です。

えんりけ

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