お互いが楽しく気持ちよくセックスすることが大切です。相手の同意なく性行為に及んだ時点で、それは「セックス」ではなく「性犯罪」だという認識を持つと共に、今回の法改正を広く知る必要があります。そして、男同士の強制的な性行為についてどういう実態があるのかの把握も必要でしょう。
時事ネタWATCH ─ 中高年MSMと暮らし ─
刑法改正! 〜男もレイプの被害者として保護される事に〜
「強姦罪」が「強制性交等罪」に
国会で刑法が改正され、第177条の「強姦罪」が、「強制性交等罪」になりました。刑法は、明治40年(1907年)に制定され、これまでいくつもの改正を経てきましたが、性犯罪に関しては、制定以来110年ぶりの大きな改正です。主な改正点は、
これまでの「強姦罪」(刑法177条)は、「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。」でしたが、今後は、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等罪とし、5年以上の有期懲役に処する。」となります。
つまり、被害者の性別を問わないと同時に(=「性中立化」)、性行為についても、膣への挿入だけでなく、オーラルセックス、アナルセックスも処罰の対象になる訳です。すなわち、男性から男性への強制的な性行為も入る事になります。
従来の強姦罪 | 加害者 | ||
---|---|---|---|
男 | 女 | ||
被害者 | 男 | × | × |
女 | ◯ | × |
改正後の 強制性交等罪 |
加害者 | ||
---|---|---|---|
男 | 女 | ||
被害者 | 男 | ◯ | ◯ |
女 | ◯ | × |
ただし、もちろん、処罰対象は強制的な(相手の同意に基づかない)行為であり、「暴行又は脅迫」を手段とすることが要件である点は旧法と変わりません。
この暴行・脅迫は、被害者の抵抗を抑圧するまでの必要はないものの、被害者の抵抗を「著しく困難にする程度のものであることを要する」とされています。
「親友に犯されて…」
もしかして、腕力差がある男から女への暴行と違って、男同士だとそんな事があるのか?と疑問に思う方もいるかも知れません。
しかし、例えば、西日本新聞(7月17日)は、次のような実例を紹介しています。
2015年夏。関西にある大学のカウンセリングルームで、4年生の小田雅人さん(22)=仮名=は精神科医に切り出した。「実は、親友に犯されて…」
加害者の男性は、12年来の親友だった。被害の約1年前、同性愛者だと打ち明けられた。男性は、小田さんが女性と旅行したことをとがめたり、体を触ったりするようになる。小田さんが抗議すると、馬乗りで顔を殴られ、口を使った性行為を強要された。「嫌だ」と言うたびにペナルティーのように殴られた。
しばらくして男性の謝罪を受け入れると「誕生日のお祝いをさせて」と食事に誘われた。その日、肛門性交による被害に遭う。殴られた痛みと恐怖がよみがえり、抵抗できなかった。
翌朝、泣きながら帰宅し、熱を出した。その夜、遺書を書いた。・・・と、かなりショッキングな記事です。
昨今の「LGBTブーム」の中では、いじめやハラスメント等の場面においての「被害者としてのLGBT」がクローズアップされる傾向があったように思いますが、今後は、「加害者としてのG」も焦点化されていくのかも知れません。(そういえば、ちょうど、「ハッテン銭湯と呼ばれて…ゲイのハッテン被害に悩む銭湯店主の本音」と言う記事がネットで話題になりました。「LGBTの権利運動が進む一方、これまで表立って語られることのなかった一部のゲイによる行為の是非に注目が集まり始めています。」と述べて、これもある意味「加害者としてのゲイ」に焦点を当てています。)
更なる法改正の動き
もともと、今回の法改正に向けて動いてきたのは、性暴力被害者を支援する女性の権利の活動家が主でしたが、それとともに、セクシュアル・マイノリティの問題に取り組んできた「レイプクライシス・ネットワーク」も動いてきました。
今回の法改正で被害者が男女かを問わない事になりましたが、行為はあくまで性器(陰茎)によるものですので、例えば、女性から女性への(性器によらない)強制挿入行為は対象ではありません(ただし、強制わいせつ罪には当たり得ますが)。
異物や手指の挿入でも、被害者が受ける精神的苦痛の大きさは、性交等と何ら変わらないとして、「性交等」と同等に取り扱うべきであるという意見もあります。
そこで、「レイプクライシス・ネットワーク」のプロジェクトとして、「Broken Rainbow-Japan」を立ち上げて、3年後の法改正見直しのために、活動を開始したとの事です(Twitter)。
「Broken Rainbow」って、つまり「壊れた虹」ですね。
賛同人には、東京・aktaのジャンジさんも名を連ねており、「性被害を受けてなお、セクシュアリティで差別される社会はおかしいです。ペニスに限らず、その行為が裁かれる必要があります。すでにLGBTsの中でも、起こっていること…」というメッセージを寄せています。
セックスは…
過去の南界堂通信
- 2023年度
- 2022年度
- 2021年度
- 2020年度
- 2019年度
- 2018年度
- 2017年度
- 2016年度
- 2015年度
- 2014年度
- 2013年度
- 2012年度